ミイラと言えば、エジプトのミイラが最も有名です。遺体を塩漬けにして、内臓を取り除き、包帯でぐるぐる巻きにするやつですね。或いは、スウィン・ヘディンがシルクロードで発見した「楼蘭の女王」もそうです。その他にもインカ帝国のマチュピチュの冷凍ミイラ等々。近代では、社会主義国の指導者の遺体が防腐処理を施して保存されていますが、これも広義のミイラと言えるかもしれません。
では、そういうミイラは日本にはないでしょうか?実はあります。ここはそういうミイラをご紹介するページです。
日本にあるミイラで、最も有名なものは、東北は平泉の中尊寺にある藤原3代のミイラでしょう。このミイラは1950年に初めて調査され、注目を集めましたが、この項でご紹介するのは、山形県の湯殿山を中心に残されている仏僧(修験者)のミイラです。
日本のミイラに関する学問は、まだ日が浅く、ミイラ作りの背景・経緯については、不明な部分も多いようです。学術的なことに触れる知識はありませんが、湯殿山を中心に残されるこれらのミイラは、以下の点で特殊という理解をしています。
結果的に果たせなかったものもあるとは言え、自らミイラになることを目的として修行をし、ミイラになったものであること。
ミイラが仏像と同じく、信仰の対象となっていること。
後者の同様な例としては、中国広東省の禅宗六祖慧能や、台湾の慈航大師、チベットのバンチェン・ラマなど海外でも幾つか見られますが、前者の例は極めて稀と言えます。これらのミイラは決して有名人ではありませんが、現在では近隣の信仰を集めています。この海外に類例を見ないミイラにお参りしてみるというのは如何でしょうか。
これらのミイラは、通常「即身仏」と呼ばれていますが、これは真言宗の始祖空海の「即身成仏論」に基づく呼び名であり、各ミイラの思想的背景は様々であると判明した現在では、この呼び名は厳密には正しくないとの考え方もあるようです。従って、この項では、ミイラ学の先駆的名著である「日本ミイラの研究」に倣って、「日本ミイラ」と呼ぶことにしています。